日にちを区切らない約束も
生きていく上では必要なものだと思う。
「落ちついたら海外旅行でもしようか」
と飛行機嫌いの父親がベッドで言ったので
体力も相当落ちていたのに無理矢理写真を撮りがんばって申請に行き
母と一緒に10年パスポートをとった。
苦労して手に入れた小さな黒い手帳には
なんのスタンプも押されないまま
父はパスポートもビザも不要な国へ飛んでいった。
「どこへ行きたかったんだろうね」
そんなことも話し合ってなかったんだ!
と11年経った今、ようやく笑いながら言えるようになった。
それまで海外旅行なんてしたことなかった母は
あれから韓国に何度か、エジプト、ハワイも行ったらしい。
そして10年パスポートを更新して年末もどこかへ飛んで行くそうだ。
父親と行けなかった「どこか」を探しているようにも見えるし
たんに楽しく旅行しているだけにも見える。笑
もっと早く会社を休ませてどこなと行かせればよかった、とか
当時はいろんなことを後悔して
遺った家族はあれこれ思ったり泣いたり話したりしたのだけれど
「そうね、行こうね」
という日にちの決まっていない約束があることが
父を多少なりとも支え
母に明日以降のことを考えさせたのであって
実際に行ったかどうか、というのはあまり大きなことではなかったんだろう、
と今は思うのです。
↓父です。キリンビールなヒトでした。